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近くて遠い

第32章 祭り

空気銃のレバーを引けずに唸っている隼人を見て、私はやってあげるといって、空気銃を受け取った。



「んんんっ……」



だが、レバーは意外にかたくて私の力でも下がらない。


どうしたものかと思いながら、踏ん張っていると、後ろから手が伸びて、ひょいとその空気銃を取られた。

えっ…


驚いて、後ろを振り返ると、要さんがカシャンと意図も簡単にレバーを引いて、隼人に返した。



「あ、ありがとうございます…」


「ん?あぁ、別にいいですよ、あれくらいのことで。
いやしかしおもしろいなぁ…、この距離で撃つんですか?」


と要さんが髪をかきあげながら、屋台を覗き込んだ。


「えぇ…」


本当に来たことないんだ…

私は何だかそれがちょっとおもしろかった。


隼人が身を乗り出して、一番難しそうな場所にあるお菓子の箱を狙う。



「この距離じゃあ、誰でも出来るんじゃ?」



そんな事を要さんが言った矢先、パンっと音がして、隼人が的から大きく外したところにコルク弾を飛ばした。



「ありゃ…」



おもしろい声を出しながら、
顔をしかめてそれを眺める要さんがおかしくて、私はクスクス笑った。



「射的って意外と難しいんですよ。
特にあんなに積み上がってたら、びくともしないし…」




私の言葉に要さんは顎に手をあてながら、ふんん、と不服そうな声を出した。



「僕もやろうかな。」



「えっ…!」



びっくりして要さんを見つめると、要さんはまるで少年のようにニヤリとしながら、財布を取り出しコルク弾を5つもらった。



「隼人、お前どれがほしいんだ?」



5つとも大きく外してシュンとしている隼人があれ!と言ってやはり一番難しいのを指を指す。



「あれか。
あとは?」



えっ…
あとはって…
やる前からそんな…


射的のおじさんを見ると、案の定バカにしたような顔をして要さんを眺めていた。

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