テキストサイズ

近くて遠い

第32章 祭り

しかし、要さんはそんなおじさんの顔に気付かずあろうことか、隼人からほしいやつを5つ聞き出した。


5つしか弾はないのに…



「よし、了解っ!」



要さんはニカッと笑って空気銃に弾を詰めて、少し後ろに下がった。



え?下がるの?


不思議に思いながら私は横から要さんを見ていた。



いたずらっぽかった眼が急に真剣になって、的を定める。



ただの射的…



なのに、なんかの武道を見ているような錯覚がするほど、その場に緊張が走って、要さんが構える。



パァン──


と軽快な音が鳴ったと同時にパタッと隼人が欲しいと言った景品が一つ倒れた。


その途端、周りにいた人がおぉ、と小さくどよめく。



だが要さんはそれを気にも止めず当然のような顔をして再びレバーを引いて構えた。



再び音が鳴ると、景品が倒れる。


すごすぎる…



今年の射的は簡単なのだろうか?


と疑ったが、他に撃っている人を見るに、難易度はいつも同じようだ。



要さんはパタパタと連続で面白いように景品を倒し、次第に射的の場所に人が集まってくる。




「射的のとこにめっっちゃイケメンがいるって!」

「うっそまじ?!」



そんな声が後ろから聞こえる。



最後の一つ。

残っているのは一番難しいやつだ。



要さんが再び構えると、

私だけでなくその場に集まった皆が固唾を飲んだ。



パァン────




放たれた弾は





当たり前のように、


的に当たってその商品を倒した。



わぁぁぁっ!!!


と一気に周りが熱狂し、射的のおじさんは大きく項垂れていた。



ストーリーメニュー

TOPTOPへ