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近くて遠い

第33章 破壊

自分が生きている意味があるのか、光瑠はよく分からなかった。


母も父も悠月も


真希も去った今…



どうして自分は生きているのだろうか。



息を吸って吐いているのも、苦しむためだけのような気がしてならない。



死んでしまいたい──



破壊願望の対象が光瑠自身に向く。




───────もう死にたいなんて言わないでくださいっ…



自分にしがみついて涙を流しながらそう言った真希の言葉が頭をよぎる。



「ふざけやがって…!」



机に積まれた書類から何まで、光瑠は自分の腕でなぎ倒した。



「お前がいたからっ!!
だからっ、もう死にたいとは思わなかったんだ!!
なのにっ!お前はっ!!!」


堪えきれずに光瑠は大きな声で叫んだ。




完全に壊れてしまった。



それを直せるのは


光瑠を壊してしまった少女だけ…。



壊して

叫んで

酒を呑んで


また壊して…



終わらない闇へのスパイラル。



肩で呼吸をしながら光瑠は両手で頭を抱えた。



そこに、コンコン──とノックが鳴る。



「うるさいっ!!!!」



目をギラつかせながら、扉を見つめると、酒田が顔を出す。



「社長……!実は今マイスターの代表が…」



そう酒田が言い掛けたとき、小太りで禿げ上がった見知らぬ男が酒田を押し退けて、社長室に入ってくるなり土下座をした。



「なんだ、お前はっ!!!」


オロオロと弱々しく頭を下げるその音に光瑠は頭ごなしに怒鳴った。



「かっ…株式会社マイスターのっ…代表取締役の渡辺と申しますっ」


切羽詰まったその姿を光瑠は蔑んだように見下ろした。




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