近くて遠い
第5章 母と病
「君は……藤木真由美さんの娘さんかな?」
「はい、娘の真希です。」
私が深く頭を下げると、先生は身体を仰け反らして私の背後を見た。
「お母さんは待ち合い室?」
「はい。少し疲れたみたいで。」
「そうか、その方がいいかもな。」
え?
先生は何か含みを持たせる言い方をしたあとに、私にイスに座るよう促した。
先生はパチッと何かのスイッチを入れると、お母さんのレントゲン写真なのか、私にはよく分からないものをじっと眺めて、うーんと唸った。
「少し厳しいことを言うけど、覚悟は大丈夫かな?」
先生のその言葉に、私はゴクリと唾を飲んで首を縦に振った。
「そうか…
真由美さん……君のお母さんは、はっきり言って、あまりいい状態ではないね。」
何となく分かっていた事なのに、いざ言葉に出して言われると何か鈍器で殴られているのかと錯覚するほど衝撃が強かった。
「咳が止まらないみたいだね。ここに、黒い影が見えるだろう?」
「はい…」
返事をしながらも本当はよく分からなかった。
「これはとても厄介な場所だね。
もう少し早く来てくれたら良かったんだけど…
まぁそんなことを今言っても仕方ないからね。
近いうちに入院してもらうことになるよ」
先生はきっと言い慣れているのだろう。
感情がないロボットのごとく、淡々と言葉を私に突き付けた。
必死に話を聞いている私の前に先生が紙を一枚差し出した。
「これは…?」
「うん、治療法案だよ。
色々あるんだけどね…
まぁでもお母さんは早く処置しないと手遅れになっちゃうから、出来ればこのB案にした方がいいと僕は思うよ。」
そう言って指差した先を見て、0がいくつも並ぶその金額に息を飲んだ。
「はい、娘の真希です。」
私が深く頭を下げると、先生は身体を仰け反らして私の背後を見た。
「お母さんは待ち合い室?」
「はい。少し疲れたみたいで。」
「そうか、その方がいいかもな。」
え?
先生は何か含みを持たせる言い方をしたあとに、私にイスに座るよう促した。
先生はパチッと何かのスイッチを入れると、お母さんのレントゲン写真なのか、私にはよく分からないものをじっと眺めて、うーんと唸った。
「少し厳しいことを言うけど、覚悟は大丈夫かな?」
先生のその言葉に、私はゴクリと唾を飲んで首を縦に振った。
「そうか…
真由美さん……君のお母さんは、はっきり言って、あまりいい状態ではないね。」
何となく分かっていた事なのに、いざ言葉に出して言われると何か鈍器で殴られているのかと錯覚するほど衝撃が強かった。
「咳が止まらないみたいだね。ここに、黒い影が見えるだろう?」
「はい…」
返事をしながらも本当はよく分からなかった。
「これはとても厄介な場所だね。
もう少し早く来てくれたら良かったんだけど…
まぁそんなことを今言っても仕方ないからね。
近いうちに入院してもらうことになるよ」
先生はきっと言い慣れているのだろう。
感情がないロボットのごとく、淡々と言葉を私に突き付けた。
必死に話を聞いている私の前に先生が紙を一枚差し出した。
「これは…?」
「うん、治療法案だよ。
色々あるんだけどね…
まぁでもお母さんは早く処置しないと手遅れになっちゃうから、出来ればこのB案にした方がいいと僕は思うよ。」
そう言って指差した先を見て、0がいくつも並ぶその金額に息を飲んだ。