近くて遠い
第6章 No.1の逆襲
──────…
ガチャリ
なるべく音をたてないように家の鍵を開けると、誰も起こさないようゆっくりと部屋に入った。
お母さんにキャバ嬢をしてることがバレないように、遠くのバイトに出掛けたフリをして駅の公衆トイレでドレスに着替えてメイクするという生活を始めて1ヶ月とちょっと。
最初はあった罪悪感も今ではもう薄れてきてしまっていた。
お母さんと隼人がぐっすり寝ているのを確認すると私はようやくイスに座って一息ついた。
結局、あのあとは何もなかったなぁ…
ぼんやり有川様のことを考える。
突然指名されてから、2週間近くが経とうとしていた。
最初あの大きな部屋で二人になったときは何をされるのかと思ったが、有川様はただぴったり隣に私を置いて酒を作れと命じるだけだった。
そして、じっくりお酒を飲みながら、あの鋭く美しい瞳で私を捉えるのだ。
わっきゃわっきゃと
話すこともないければ、少しは覚悟していたいやらしいお触りもない。
それだけのことなのに、
有川様はもう毎日のように通ってきては同じことを繰り返す。
はっきり言って私じゃなくてもいいはずなんだけどな……
それにしてもたまに見せるあの横柄さはどうにかならないのかな…
そして何の気なしに玄関を見た。
カナメさん……
グレーの傘が私の胸を締め付ける。
あの優しい笑顔…
ズタズタだった私を救ってくれたカナメさん…
日を増すごとに会いたいと言う気持ちが強くなって、あの日の事が鮮明に思い出される。
これが、恋…なのかもしれない。
学校に通っていたとき、仕切りに友達の梨子が話していた気持ちが今の自分に当てはまるような気がした。
「カナメさん……」
お母さんと隼人の寝息だけが聞こえる部屋の中、
私は初恋の人の定かでない名前を1人小さな声で呟いた。
ガチャリ
なるべく音をたてないように家の鍵を開けると、誰も起こさないようゆっくりと部屋に入った。
お母さんにキャバ嬢をしてることがバレないように、遠くのバイトに出掛けたフリをして駅の公衆トイレでドレスに着替えてメイクするという生活を始めて1ヶ月とちょっと。
最初はあった罪悪感も今ではもう薄れてきてしまっていた。
お母さんと隼人がぐっすり寝ているのを確認すると私はようやくイスに座って一息ついた。
結局、あのあとは何もなかったなぁ…
ぼんやり有川様のことを考える。
突然指名されてから、2週間近くが経とうとしていた。
最初あの大きな部屋で二人になったときは何をされるのかと思ったが、有川様はただぴったり隣に私を置いて酒を作れと命じるだけだった。
そして、じっくりお酒を飲みながら、あの鋭く美しい瞳で私を捉えるのだ。
わっきゃわっきゃと
話すこともないければ、少しは覚悟していたいやらしいお触りもない。
それだけのことなのに、
有川様はもう毎日のように通ってきては同じことを繰り返す。
はっきり言って私じゃなくてもいいはずなんだけどな……
それにしてもたまに見せるあの横柄さはどうにかならないのかな…
そして何の気なしに玄関を見た。
カナメさん……
グレーの傘が私の胸を締め付ける。
あの優しい笑顔…
ズタズタだった私を救ってくれたカナメさん…
日を増すごとに会いたいと言う気持ちが強くなって、あの日の事が鮮明に思い出される。
これが、恋…なのかもしれない。
学校に通っていたとき、仕切りに友達の梨子が話していた気持ちが今の自分に当てはまるような気がした。
「カナメさん……」
お母さんと隼人の寝息だけが聞こえる部屋の中、
私は初恋の人の定かでない名前を1人小さな声で呟いた。