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春の風

第11章 1. reunion

柚衣にとっては、何もかもが新鮮だった。草木、道ゆくクルマのクラクション。普通に生きていれば普通のことのすべてが宝である。

子どものころ、すべてが宝にみえ、大人になるとすべてを知ることで、大したことない、日常はつまらない、と感じる、などとよく言うものだ。
けれど当たり前のことこそ幸せで、大切なのだ、柚衣は、初めて、そう感じた。


『ゆーいーちゃん!おはようさん!』


会いたくてたまらなかった、友人の声。


「おはよう、みっちゃん!」
それだけで、涙が出た。


『なにさ。ゆいちゃん、何で泣いてるの?』

宮間夏希に会ったのは、実にひと月ぶりであった。

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