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不器用なタッシュ

第6章 不安

香織の仕事が終わる頃、メールを送った。


『今夜、来れる?』


返信は直ぐに、返ってきた。


『行けるよ!何か作ろうか。』


フッと笑みが漏れる。


『作って。駅で待ってる。泊まれる?』


会える時は、香織に出来るだけ触れていたい…。


抱いて、腕の中で漏れる吐息は、確実に俺のモノだって実感出来るから。


『大丈夫だよ。用意してから向かうね。』


トックン…。


香織が俺の為にしてくれる行為が、言葉が、気持ちが唯一俺の存在価値になっていってる。 


そんな事をまだ解ってなかったから、香織の一つ一つに一喜一憂してしまっていた。 


感情と感覚でしか、解ってなかった…。


だから…『好き』って言葉の重みなんて、いつまで経っても知ろうとしなかったんだ。 

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