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不器用なタッシュ

第15章 対決

小田切と店員のやり取りにイラつきを感じながら、さっき言いかけた質問の続きを聞こうとした――――。

「て、言ったら満足かい?」

――――が、それは違う内容へと変更させられる。


「なっ? どういう意味だよ。香織のこと好きじゃないのかよ!」


俺の返しに小田切は即答せずに、ブレンドコーヒーを一口啜る。


砂糖も入れずにブラックで飲むのか――――香織と一緒だな。

こいつの一つ一つの行動が、一言一言が、俺の劣等感を増大させていく――――。


小田切は少し目を伏せたまま、カップをソーサーに戻した。


「大事に思うほど、『好き』……って簡単に言えない場合もあるんだよ」

「え?」

「嘉之くん、君は何で香織に『好き』って言わないの?」


質問がまた、すり替えられた。

それも一番触れられたくない俺の――――『トラウマ』。


何の意図があるのか知らないが、

「それは……あんたに言う必要ないだろ」

そんなこと言わせて何になるんだ――――俺が『好き』って香織に言わないなら、俺が言うってか?

でもお前も言えない『何』かがあるんだろ?

まぁ、そんなのどうでも良いけどな――――。


「『好き』なんてチープに言葉にしなくても、俺と香織は絆で繋がってんだよ」


そうだ――――『好き』なんて言わなくたって、俺は香織を誰よりも必要だと思っているし、香織だって付き合う前からずっと、俺を支えてきてくれんだ。

俺たちの絆は他の奴が語れるほど、簡単な物じゃない――――。

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