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不器用なタッシュ

第15章 対決

今の俺に出来る精一杯の意地に、ゆっくり振り向きながら小田切さんが微笑み返す。


「それは、香織が決めるよ」

「小田切さん」


最後まで小田切は、自分勝手に言い捨てて香織を浚っていった。


今すぐにでも小田切を殺してやりたい――――くらいの衝動に駆られる。


全身から吹き出す憎悪で、小田切の背中を切りつける思いで睨み付けると、去り際で微かに振り向いた香織が、不安げに顔を顰めているように見えた。


カラン――カラン――――。


二人が店から出ていったことを知らせる鈴の音が、凄く遠くに聞こえる。


俺は小田切の背中を睨んだ時のまま、虚空を見詰めた。


目に映るその景色が徐々にぼんやりとくすみ――――グニャりと歪む。


それと同時に俺の中で色んな感情も、グルグルと渦を巻き始める。


怒り、憎しみ、苛立ち、不安、悲しみ――――グルグル、グルグル、グルグル――――。


混ざり合う負の感情に、胸の奥が重たくて――――苦しい。


纏わり付く不快な感覚を吐き出してしまいたい。


大声で叫んで、感情任せに机を蹴飛ばしそうになるのを必死で堪える。


「くっそぉ……」


苦しい、苦しいぃ――――悔しい。


『例え君の子でも、構わないよ。香織の子なら、俺が父親になっても』

『言ったろ……君たちの6年間ごと引き受けるって』


勝ち誇ったような笑顔で言ってのけた小田切の顔が、頭の中に鮮明に焼き付いて消えない。


「これで勝ったと思うなよな……」


誰も聞いてない怒りを吐き出して、歪んだ視界に向かって立ち上がった。

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