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ただ…愛してる

第14章 遭遇

俺が見た
はなこさんは
余りにも滑稽な
泣き虫女になっていた。


理由なんかいらない
その涙を誰の為にながすの


俺は…はなこさんの身体を掴み



『落ち着けよ…智美』


たくさんの雨と
たくさんの嗚咽と罵倒の末


殴られていたのは
東京にいるはずの旦那で…
下を向き
小さく



『ごめん…もう…』



俺は…旦那に嫉妬した
こんなにも
はなこさんの感情を左右してきたの?




『ねぇ…旦那さん…俺がもらっちゃうよ…こんないー女…あんたには渡せないからさ♪』


俺は海外ドラマのように
指でピストルをつくり


旦那さん目掛けて




『バンッ(笑)てね』


はなこさんを抱え
旦那さんから離れた




旦那さんが
立ち止まったまま
動かなかったのを
俺は見逃さなかった。




迷子の
迷子の
はなこちゃん♪



『はなこさん。ずぶ濡れだね…車乗ろうね』


小さく頷くはなこさん
震える身体を俺に任せ
涙を雨と共にアスファルトへ
堕ちた。

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