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秘め事は月の輝く夜に、あなたと~後宮華談~

第3章 すれ違う心

 崔内官が共にあれば、明香は自分の奥底で燠火のように妖しく燃え続ける想いから眼を背けていることができる。もし王と二人きりになれば、嫌が上にも自分の恋情を自覚してしまうことになるだろう。それこそ、拷問に等しい。
「崔内官、今夜は殊の外疲れているようだ。顔色が悪い。もう下がって、寝(やす)むが良い」
 書見していた王がふと顔を上げ、声をかけた。

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