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秘め事は月の輝く夜に、あなたと~後宮華談~

第3章 すれ違う心

 王の観察眼は鋭い。確かに、崔内官は昼間より顔色が芳しくなかった。眼の縁には隈がくっきりと浮き出ている。
「はい、しかしながら、殿下がまだご就寝にならぬのに、私がお先に床に入るわけには参りませぬ」
 いかにも忠実無比な崔内官らしい科白に、王は苦笑した。
「予が構わぬと申しておる」
「殿下こそ、そろそろお寝みになっては如何にございましょう。もうとうにご就寝の刻限を過ぎております」

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