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秘め事は月の輝く夜に、あなたと~後宮華談~

第3章 すれ違う心

「―」
 白いすべらかな頬を涙の滴がほろりと転がり落ちた。
 王の動きが止まった。
 瞳の奥で燃え盛っていた激情の焔が次第におさまってゆく。
「―済まぬ」
 いかほど経ったのだろう、明香には随分と果てしなく長く感じられたが、恐らく実際にはたいした時間ではなかったはずだ。

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