秘め事は月の輝く夜に、あなたと~後宮華談~
第4章 心のゆくえ
「幾日か前、崔内官が人払いを願い出た上で折り入って相談事があると申して参った。彼(か)の者によれば、主上がさる女官に夢中だというのだ。最初、その話を聞いた時、私はけして悪いものではないと思うた。そなたの申すがごとく、そろそろ主上にも元子さまご生誕あって良き頃と思うておったからな。たとえ生母が側室であろうが正室であろうが、そのようなものはこの際、関係ない。主上に御子がなきままでは、最悪の場合、王室の血統そのものが絶えてしまうゆえ。主上が崔内官を呼び止せ、こう仰せになったそうだ」