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秘め事は月の輝く夜に、あなたと~後宮華談~

第1章 人知れず咲く花

「十年にあいなりまする」
「そうか、早いものだな」
 柳尚宮は過ぎ去った昔を懐かしむような口調でしみじみと頷いた。
 十一歳で見習いとして入った当時、明香は自分でも呆れるほど、柳尚宮によく叱られたものだった。まず歩き方、拝礼の仕方に始まり、言葉遣いといったごく基本的な礼儀作法、宮廷でのしきたり等憶えねばならないことは山ほどもあった。

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