テキストサイズ

秘め事は月の輝く夜に、あなたと~後宮華談~

第1章 人知れず咲く花

 叱られて泣いたことも一度や二度ではなかったけれど、苦い経験は、けして無駄ではなかったと信じている。
 柳尚宮はなおも遠い眼をしていたが、やがて、フッと笑った。
「明香、私はこの十年という月日、常にそなたを見てきた。そなたは確かに派手さもないし、目立った働きというのもせぬが、いつも与えられた仕事一つ一つを律儀にこなしてきた。失敗をしたときには、その理由を真剣に考えて、二度と同じ過ちを犯さぬようにと気配りもできる」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ