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秘め事は月の輝く夜に、あなたと~後宮華談~

第1章 人知れず咲く花

 入宮といえば聞こえは良いが、明香のようなしがない下級官吏の家の娘は、一生、女官―それも階級の低い女官にしかなれない。たとえ身分が低くとも、聡明で機転が利くとか、何か一つでも取り柄があれば己れの才覚一つで尚宮まで昇りつめることもできようが、生憎、明香には気働きといったものがおよそ期待できなかった。
 鈍重というわけではないが、口下手で自分の思っていることの半分もろくに上手く言葉にできない。他人からは愛想が悪いとか陰気だとか誤解されやすい質なのだ。

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