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秘め事は月の輝く夜に、あなたと~後宮華談~

第2章 禁断の恋

「そなた―、泣いておったのか?」
 唐突に問われ、明香は返答に迷った。
「あ、いいえ」
 まさか泣いていたのだとも言えず、明香は曖昧な口調で否定するしかない。元々、息をするように嘘をつくのは得意ではない。
「嘘だな」
 王は自分の手のひらをしげしげと眺めた。
「予の手は濡れている。これは、そなたが泣いていた何よりの証であろう」
「申し訳ございません」

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