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開花

第1章 ―

 そして起き上がる間もなく、わたしの背中に何かが乗ってきたのです。

 中々に重いそれは、ぴょんぴょんと、まるで人様のことをトランポリンか何かと勘違いしているかのように跳びはねてきました。

 ずしんずしんと、ヤツが跳躍するたびに、わたしの体はエビのようにそり上がってしまい、手足はぴーんと、けのびのように伸びてしまいました。上にいるのがカエルであるとすぐに気がついたので、涙ながらに懇願しました。

「痛い! 痛い! やめてよぉ!」

 けれどもカエルは、まったく力をゆるめてくれないのです。

 それどころか、よりいっそう、高くジャンプしてくるのです。

 カエルが乗っかってくる瞬間、背中が強く押され、お腹が地面に圧迫されて、吐き気さえも感じてきました。

 わたしはもしかしたら死んでしまうんじゃないかと思いましたが、とっさに喉元から「ごめんなさいごめんなさい! わたしが悪かったから!」というセリフがこぼれ出ていました。

 すると言葉が通じたのか、ぴたりと背中へやってくる衝撃は止まりました。

 そして頭の前にずしんという音がして、目の前が真っ茶色になりました。

 今度はいったいなんだと思っていると、目の前の茶色はさらに前方へ飛びました。

 そしてさらに、前に前に飛んで、やっとそれがカエルなんだと気がついた時に、やつはぴょこんと進路を右に変えて、やがて視界の右端へと消えていってしまいました。

 しばらくぼんやりとしていたわたしですが、数分後、手を突いて立ち上がり、「よかった、許してくれたんだ――」と呟きました。

 黄色いワンピースの前側は細かい砂粒で黒ずんでしまっていて、後ろ側はぬめぬめとした、ねばっこい液体で台無しになっていました。

 それになんだか、まだ背中が重たいような気がしたのです。

 それから急に、カエルなんかに負けたことが悔しく、恥ずかしいことに思えてきました。

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