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ちょっとえっちな短篇集

第13章 しのぶれど


月のない夜だった


いや、月は出ていたのだが
厚い雲に覆われて一向にその姿を見せず

行燈や松明の明りがなければ
己の足先どころか鼻先すら見えぬ

まさに一寸先は闇の夜であった。


その闇夜を男は音もなく駆けている。

闇に紛れる装束からは
未だ乾き切らない濃い血の臭いが立ちあがっている。

慣れたとは言え
好きになれるものではない。

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