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やっと、やっと…

第10章 甘い記憶

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(唯は俺のことどう思ってるんだろうか・・・)




俺はずっと不安だった


唯と付き合い始めることになった日も、俺が一方的に無理やり唯を自分の元へ連れてきたようなものだったから



唯の気持ちを無視しているんじゃないかと気にしていた




(圭介と別れさせるだけでもよかったのに、自分の気持ちを押し付けて付き合うことになるなんてな・・・)




自分はなんて我がままだったんだろうと今更気づく




そんなことを考えながら唯を見ると、自分とは対照的になんだか笑顔にも見える表情で前を向いている






(唯が幸せそうな顔してるからいいか・・・)





そう思い唯の顔を覗き込む






「唯?どうした?」





そう聞くと唯は“なんでもない”
と言って笑い立ち止まった




(なんだよ・・・)






拗ねたような気持ちになって
少し目を細めながら唯を睨んだ









「なんで笑うんだよ」








そういいながらまた唯を睨んだ







すると唯が笑いながら






「いやあ?可愛いなあと思って」






からかう様に言う唯が可愛くて
顔を前に向けた





「うるさいな・・・


ん、行くぞ」




そう言って手を唯へと差し出す




少ししてから唯の手が
俺の手に触れた







不意に唯の顔が見たくなって
唯のほうを見ると






顔を赤く染め
俺を上目遣いに見上げていた











「―――っ!」














完全に油断していた



(そんな顔で見られたら・・・)







慌てて顔を前に向きなおす






顔が熱くなるのが分かった












前を向いて唯の小さな手を強く握り締め歩き出す








「可愛いのは唯だろ・・・」






そう小さな声で呟いた



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