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やっと、やっと…

第10章 甘い記憶



智己と付き合い始めてから
一緒に帰る時も、不意に二人きりになったときも


“恋人”であることに意識してしまってなんだかくすぐったい気持ちでいた




それは智己も同じなようだった







学校からの帰り道


そんなことを考えながら
自然と顔がほころぶ







「唯?どうした?」







「え?あ、なんにもー?」







私の顔を覗き込む智己に
立ち止まり笑いながら答える






「なんだよー」



拗ねたように目を細めて私を見る




(かわいい・・・)




その姿は子供のようで
無邪気でとても愛しく感じて
笑みがこぼれる






「なんで笑うんだよ」






そう言って智己は口をへの字に歪ませ私を睨む





その顔もまた可愛くて






「いやあ?可愛いなあと思って」







そうからかうように言った





その言葉に照れたのか
頬を少し赤く染め顔をそむける




そして






「うるさいな・・・

ん、行くぞ」






顔をそむけたまま
私へと手をやる






(手繋げってことかな・・?)





少しドキドキしながらも
智己の手へと手を伸ばし
智己を見上げる





智己の手に触れると
少し智己の体が強張るのが分かり
私の方を振り返った





智己は私の顔を見ると
少し驚いたように目を見開いて
またすぐに顔を前に向け歩き出した







智己が前を向いたまま私の手をぎゅっと強く握り小さく何かを呟いたのに、私は気づかなかった





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