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やっと、やっと…

第10章 甘い記憶




付き合い始めて3ヶ月が経った頃

私達は受験生だったから
二人きりですごせる時間も
あまりなかった




それでもお互い暇な時は
どこかに出かけたり
家で遊んだりしていた




今日はその数少ないデートの日

しかも今日は8月6日

――智己の誕生日だ






(特別な日だから可愛くしてかなきゃね・・)





そう思いながら今日のために買った黄色のワンピースを着て

伸びた髪の毛を編みこんでまとめ小さな花のバレッタをつけた




玄関へと向かい
サンダルを履く




めいっぱいなお洒落をして
玄関を出た





お洒落をするのは好きだったけど
智己のこととなるとなんだか緊張した



楽しみなような恥ずかしいような気持ちだった








駅に着くと
もう智己が待っていた





薄いデニムのシャツに
膝丈までのパンツに
スニーカーを履いていた



シンプルだけど爽やかで大人っぽくて背の高い智己には良く似合っていた

普段とは違う智己に胸が高鳴る






私が智己をみたまま立ち止まっていると、智己も私に気づいてこちらを見ていた




はっと我に返り智己へと歩み寄る





「お、おはよう」





「おう」





いつもならもっと自然に挨拶できるのに、意識してしまってぎこちなくなってしまう





(私、変じゃないかなあ・・・)





そう心配になりながらも
智己とホームへ向かい
電車に乗った








電車に揺られながら
智己がふとこちらを向く






私もそれに気づいて
智己のほうを向いた






「あの、えっと・・・」






智己が何かを言いたそうにしている







「その・・・、似合ってる・・・」







智己はそう顔を赤らめながら
そっけなく言った







私も顔が熱くなり
きっと真っ赤になっているんだろうと思いながら智己の言葉を聞いていた





嬉しくて自然と顔が緩む






「なんだよー」






智己が照れながら私の肩に自分の肩をぶつけてくる






「ふふっ、嬉しくて・・」






そう言って智己の方を見ると
私に微笑み返し
頭を軽く撫でた








こんなささいなことも
私達には全てが幸せだった



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