やっと、やっと…
第10章 甘い記憶
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唯と待ち合わせの時間よりも
15分も早く着いてしまった
駅の正面の階段の横に立って
唯を待っていた
(早く唯の顔がみたい・・)
夏休み中でなかなかお互い忙しくて会えていない
今日は久しぶりだったから
少し緊張していた
下を向きながら
気持ちを落ち着かせていた
時計台を見ようと前を向く
すると
少し離れたところに
立ち止まってこちらを見る唯が
目に留まった
髪の毛をアップしノースリーブの黄色の丈の短いワンピースを着ている
線の細い華奢な体
ワンピースから
白い足がのぞいている
(きれい、だ・・・)
普段は見ない唯の姿に
自然と見惚れていた
唯が何度か瞬きをして
こちらに向かってくる
(だめだ、普通に、しないと・・)
「お、おはよう」
「おう」
なんとか平静を装って
挨拶を交わす
なんだかお互いに気まずくなりながらもホームへ向かい
電車に乗った
空いている席に座り
ほっと息をつく
となりに座る唯をみると
唯もこちらを向いた
上目で自分を見つめる唯に
思わず胸が高鳴る
(ほんとに、かわいい・・・)
そう思ったら
口が自然と開いていたらしく
「その、似合ってる・・」
恥ずかしさのあまりぶっきらぼうに告げた
唯の目元が赤く染まり
目も潤んで見える
そして電車の中に似合わない
花が咲いたような優しい笑顔を向けた
(もうだめだ・・
今日一日、もつかわからないな)
そう不安になりながらも
唯の頭を撫で幸せを感じていた