テキストサイズ

やっと、やっと…

第10章 甘い記憶



やがて車掌のアナウンスが流れ
水族館前の駅で人の波に飲まれながらも駅を降りた




水族館は海の横にあって
その日は天気も良かったから
太陽に照らされて
海がきらきら輝いて見えた





水族館の中に入ると
子供連れの家族やカップルが多くて
水槽の中をゆっくり見る時間もなかった


だけど俺は元から水族館が好きだったからそれだけでも楽しかった


それに・・・






唯が俺のために水族館に行こうと言ってくれたことも嬉しかったからこれだけでも満足だった





イルカのショーも一緒に見た
水しぶきに濡れながらも楽しそうな唯を見て幸せな気持ちで居た






イルカのショーを見終えて
館内に戻る


唯が歩く方向には




“浅瀬の生き物とふれあおう!”




そう書かれた看板がぶら下がっていた





(“ふれあおう”・・・?)






俺はその文字を見て硬直した






(まさか・・・)






「え・・?唯触りたいの?」







(まさか唯は、

ヒトデやらなまこやらを触りたいのか?)






そんな唯に驚きながら唯を見つめる




唯はそんな俺に
“触りたくないの?”と聞く





「いや、触りたくないというか・・」





(っ触れない・・・)






「もしかして、魚とか触れないの?」





(・・・うっ)





図星だ



いや、魚は触れる




ただ、ヒトデやなまこは
触ろうとすら思えなかった






硬直する俺の様子を見て


唯が笑う





「な、なんだよ」






笑われたことに恥ずかしくなって
少しそっけなく言う





「触れないんだー、怖いの??」






俺をからかうように言う
唯に少しむきになる






「触れるから!いくよ!」






そう言って唯の手を掴み
体験コーナーへと向かった



ストーリーメニュー

TOPTOPへ