やっと、やっと…
第10章 甘い記憶
体験コーナーへ到着すると
小さな子供達が水槽を覗いて楽しそうに遊んでいる
(よく触れるよな・・・)
そう思いながら硬直してしまう
俺の顔を覗き込み
微笑んでからかう唯
“触れないんでしょ?”
そう言う唯にムキになって
唯は触ることができるのかと反対に尋ねた
唯は水槽のところへ小走りで向かいしゃがみ込むと手を突っ込みヒトデをつんつんと触って見せた
その様子を見てか
4歳くらいの女の子が唯の後ろへ駆け寄り
「お姉ちゃんすごーい!」
そう言った
唯と女の子が何かを話している
いつもとは違う大人のような優しい雰囲気の唯に胸が高鳴る
まるで妹をあやすように話す姿を見て心が温かくなって自然と笑顔になる
そのまま見ていると
女の子が俯きながら何かを言っている
その女の子はヒトデが触りたいが触れないらしい
純粋な理由で落ち込むその子に可愛らしさを感じて愛おしさが込み上げてきた
その思いに突き動かされるように
俺は女の子の隣にしゃがんでいた