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やっと、やっと…

第11章 人の夢は儚くて



「・・・っ」







肩を掴む力が弱まり
智己の手が肩から滑り落ちた



智己の顔が
今までに見たことがないほど
切なく歪んだ










そして智己は
下を向いてからベンチから立ち上がり



何も言わず



私に背を向けて
行ってしまった







「っ・・・ともき・・」






智己を
傷つけてしまった


あんな顔させてしまった









名前を呼んだって届かないのに

何度も名前を呼んだ



名前を口にする度に
涙が溢れてきた





それを止めることもできず

しばらく公園で一人で泣いた











秋へ向かう空は




とても綺麗に澄み渡って

時折肌寒くさえ感じられた





もうすぐ日が沈む





赤い夕焼けが
空を染めていく








幸せな時間は


すぐに終わってしまう







もう一度だけ言いたかったな





大好きだよ





智己





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