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「・・え」








下を向いていたから
智己の顔は見えなかった








「・・なんで？」








だけど声を聞けば分かる

智己は震えていた






驚いてるのかな







「なんでだよ」








「・・っ好きな人ができたの」










怒ってるのかな




そりゃあ

怒るよね





いきなりこんなこと言われて
納得できるわけない






怒ってるよね













「唯」







智己の真剣な声に
私は顔を上げた




分かってる




きっと呆れてる


好きな人が出来たなんて
裏切ったようなものだし






そう思って顔を上げた














（・・あ）












「唯・・・」












（何でそんな顔、するの？）












智己は切なそうに眉を寄せて
優しく私を見つめていた









「・・唯

本当のこと言って
何かあったんだろ？」









智己には本当に嘘つけないな





本当は言ってしまいたいけど

あんなこと言えない




むしろ
言ったら本当に嫌われてしまう







「・・ううん

本当だよ

好きな人ができたの」








「唯、言って」







智己は私の肩をぐっと掴んだ
いつもよりも力強い



（だめだ、ここで

流されたら・・・）







「なあ、唯・・！」










「っやめて・・！


本当だって言ってるでしょ？

智己のことはもう好きじゃないの・・・！！！」






泣きそうになるのをこらえながら
精一杯の嘘をついた



声を荒げてしまった