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やっと、やっと…

第3章 小さな黒い点


リビングに圭介を通す

「そこのソファーに座ってて」


私は圭介がよく飲んでいる
ホットレモンティーを入れた

「ごめんね、携帯家に忘れてきちゃってたの・・」

レモンティーを入れながら
圭介に言った

「いいよ。そうだろうと思ったし、唯が無事だったからよかった」

レモンティーを圭介に出す
私は圭介の隣に座った

「私は大丈夫だよ
田舎なんだし、大竹君も居たから」


圭介が“大竹君”と言う言葉に
反応する

「唯?」

「どうしたの?」

レモンティーを飲む手をとめて
私の顔をまっすぐに見る

「大丈夫だった?」

「え?
だから、大丈夫だったよ?」


私が笑いながら言うと


ギュッ

座ったまま私を抱きしめた


「違うよ
大竹になにもされなかった?」


「え・・?」


「唯?何かされた?」


(――何を、言ってるの?)


圭介の声は真剣だった


「なにって・・?
何もされてないよ?」


圭介の腕の力が強まる


「俺心配なんだよ、唯が可愛いから、誰かのところに行っちゃうんじゃないかと思って・・」


「け、圭介、苦し・・」


「唯、大好きだよ
唯には俺だけだ・・・」


圭介は私の言葉なんて聞かず
強く私を抱きしめる


「唯、唯っ・・」


グィッ


「んっ・・」


圭介は私に強引に口付ける

口付けは深く濃厚になっていく


(やだ、怖い!)


抵抗しようとしても
圭介の力には敵わない


「・・っん、やぁっ・」


それでも必死に圭介の胸を押して
抵抗する


(お願いっやめて!)


圭介が私の目尻に溜まった
涙を見て体を離す


「っごめん!」


圭介は焦って私に謝った

「ううん、いいの」

私は放心のまま答えた

「俺、つい・・」

「いいよ、それよりもうこんな時間だし、帰った方がいいよ
親さん心配するでしょ?」

時計は20時を示していた


「本当にごめん」

「大丈夫だよ 私こそごめん」


そうぎこちなく話して
圭介は家を出た


本当は圭介の心配のために
帰らせたわけじゃない

私の心に、
少しの恐怖感が生まれていた

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