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やっと、やっと…

第7章 違う姿





――圭介は




泣いていた






自分が愛する人を傷つけたことに


取り返しのつかない深い後悔に

襲われていた





衝撃的だった


圭介が泣くなんて



「ごめんっ・・・ごめん、唯」







愛おしそうに私の髪を撫でる




さっきの圭介はどこに行ったんだろうか






私を見つめる目は

いつもの優しい圭介だった








「けい、すけ・・・」





「ごめん、唯、ごめんっ・・・」





何度も何度も
私を見つめながら圭介は言う









私はもう何もかも
どうでもよくなってしまっていた






なんで圭介が泣くの?


そんな思いよりも




心の穴が埋まらなかった






「唯、ごめんね、ごめ」




「もういいよ、何も言わないで」




私は重たい体を起こし
無残にも開かれたブラウスの前を合わせ
ブレザーを着る




「唯・・・」



ベッドに座る圭介を見下ろし


涙を拭わないまま



「もういいから、謝らないで」




そう告げて圭介の家を出た







外はもう暗い
雪が降っている







私の心には大きな穴が
空いたままだった









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