 
やっと、やっと…
第8章 過ち
・・・
時間も空気さえも止まってしまったようにお互いはただ顔を見合って動かない
「唯・・」
暫くの沈黙を先に破ったのは
圭介だった
「チョコ、おいしかったよ
カードもありがと」
(チョコ・・)
一昨日、あの日圭介の家に
マフラーと手袋と、圭介へのチョコも置いたままだった
(カードも・・)
圭介のためにバレンタインのカードも書いた
「ごめんな、唯」
圭介の切なそうな顔
見てられなかった
今にも涙が溢れそうだった
「・・謝らないで」
下を向いたまま
私は答えた
「もう、いいから、
もう絶対あんなことないよね?」
言いながら顔を上げる
そのときの圭介の目は
真剣だった
「絶対にない
もう唯のこと傷つけたりしない」
圭介の真剣さに
私は頷いた
――頷いてしまった
これから
どんなに暗い闇へ落とされるのか
私には分からなかったから
 
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