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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第5章 恋花二つ目~恋紫陽花~壱

 でも、と、お民は思わずにはおられない。そんなことは、所詮は自分が我が子を失うという哀しみを知らぬ者の科白だ。現実として自分の子どもを失った親は、いつまで経っても、亡くした子どもを忘れるなんてできないのだ。それがいかに空しい行為かと知りながらも、あの子が生きていれば今頃は幾つと指を折り、亡くした子に想いを馳せずにはいられない。たとえ、いかほど愚かと誹られようとも、それが、親の情愛というものなのだ。

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