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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第5章 恋花二つ目~恋紫陽花~壱

 噂は噂を呼び、近くの一膳飯屋の色っぽい女将が相手ではないか、いや、八百屋の、あの色の白い可愛い娘がそうではないかと、長屋の住人は興味本位にあれこれと取り沙汰したものの、結局、源治本人があまりにもそのことに関してあっけらかんとしているので、直にその話は沙汰止みになった。
 もしかしたら、筆屋の娘に懸想されたのがいやで、断る口実に惚れた女がいるなぞと嘘を言ったのではと、勝手に結論づけられることになった。

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