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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第5章 恋花二つ目~恋紫陽花~壱

「大丈夫か?」
 顔は見なくても、その声の主がそも誰であるかはすぐに判った。その問いが兵助の容体についてのものか、お民自身に向けられたものかは判らず、返事をしかねている中に、源治が静かな声で続けた。
「これ、玄庵先生のところから貰ってきたよ」
 お民はのろのろとした動作で振り向き、改めて源治の存在に気付いたとでもいうかのように顔を上げる。

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