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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第5章 恋花二つ目~恋紫陽花~壱

「あ、あたし、何してるんだろ。ごめんよ。何だか、ふらっときちまって。そうだ、早く、亭主に薬を呑ませてやらなきゃ」
 そう言いながら立ち上がったお民はちゃぶ台の上の湯飲みを取ろうとして、取り落としてしまう。弾みで湯飲みが畳に転がり、中の白湯が全部零れて、染みを作った。
「あ―」
 お民は瞬時に言葉を失い、声をつまらせた。

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