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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第6章 恋紫陽花 弐

 想いを寄せていることに気付いたのは、いつのことだったろう。源治は元々、この徳平店から近い長屋に老母と二人で暮らしていた。父親は早くに亡くなり、二つ違いの姉は十七の春、小さな紙屋に縁あって嫁いだ。その姉に三年後、初子が生まれ、母は子守も兼ねて姉夫婦と同居することになった。それを機に、源治はそれまで暮らしていた長屋を引き払い、徳平店に引っ越してきたのだ。
 それが、お民との出逢いだった。

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