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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第6章 恋紫陽花 弐

 もっとも、当然ながら、兵助は仮に源治の気持ちを知っていたとしても、それを大っぴらに口にするような男ではない。源治の心や周囲に及ぼす影響を慮り、その秘密をずっと己れの胸に秘めておく、そんな男なのだ。
 源治だとて、むろん、心の底から兵助の死を望んでいるわけではない。が、今回の事態をどこかで歓迎しているもう一人の自分がいる―と、そのことを完全に否定しきれない。

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