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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第7章 恋紫陽花 参

「あたしさ、あの人を一人で逝かせちまったんだよ」
 声が、ほんの少しだけ震える。
「所帯を持ってから十二年連れ添った亭主の最期を看取ってもやらなかった。あたしったら、亭主が今の際だってときに、呑気に眠りこけてたんだよ。何てザマだろう。兵助もさぞ薄情な女房だって、呆れてただろうね。最後の最後に愛想を尽かされちまったかもしれない」

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