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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第7章 恋紫陽花 参

 源治はその時、この男はもしかしたら、自分の秘めた想い―彼の女房への恋情をとうに知っているのではないかと感じたのだ。
 その時、源治はお民がこしらえたという弁当を兵助と並んで食べている最中であった。 お民は料理上手で、源治が兵助と同じ普請場で仕事をする日は、いつも源治の分まで弁当を作ってくれた。
 あからさまに女房の自慢をする兵助に、源治は内心は憮然としながらも、上辺は愛想良く相槌を打たないわけにはゆかなかった。

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