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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第7章 恋紫陽花 参

 お民は力なく首を振ると、その場から駆け出した。だが、源治とお民の脚では所詮、調べ物にならない。大人と子どもが競争しているようなものだ。
「おい、待てよ」
 ほどなく追いつかれ、手首を掴まれる。
 お民が返事をしないで顔を背けていると、手首を掴む手に力がこもった。
「―痛い、源さん。痛いよ」
 お民が訴えても、源治は一向に力を緩めようとも手を放そうともしない。

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