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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第8章 三つめの恋花  桜いかだ 其の壱 

 まだ物心ついてさえいなかった幼い娘を、弥助は男手一つで育てた。娘のために後添えも娶らず―とは言っても、無口で無愛想な弥助に言い寄ってくる物好きな女もいなかったというのが実状ではあるが―、ひたすら仕事に明け暮れ、唯一の愉しみといえば、近くの一膳飯屋で一合の晩酌をしながら、夕飯をつつくことくらいのものであった。

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