テキストサイズ

花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第9章 花いかだ 其の弐

 白い可憐な花が寒風に身を震わせ、彼が手向けた線香が白く細いひとすじの煙となって、空へと立ち上ってゆく。
 弥助の瞼に、かつての最愛の女の笑顔が生き生きと甦る。彼女のこよなく愛した桔梗の花のように、優しい笑顔の似合う、それでいて、凜とした強さを持った女だった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ