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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第9章 花いかだ 其の弐

 お静と暮らしたのは夫婦となってからだけの年月を数えれば、三年にも満たない。それでも、弥助にとって、お静と共に過ごした日々は今でも色褪せることなく輝いていて、まさに三年が十年、いや二十年にも匹敵するほどの充実して満ち足りた時期であった。
 だが。どうやら、最近、弥助の中では別の女の面影がしっかりと灼きついてしまったらしい。
 気が付けば、お静のことを思い出すより、おれんのことを考えている時間が多くなっている。

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