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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第9章 花いかだ 其の弐

 おれんが愕いて振り向く。
 が、愕いたのは、おれんだけではなかった。
 弥助は、振り向いたおれんの顔を見て、眼を見開いた。
 白い頬をひとすじの涙がつたい落ちている。何故、ここで弥助を見て、おれんが泣くのだろう。
 泣き顔を見られたことに気付いたのか、おれんが身を翻そうとする。
 が、弥助はなおも、おれんの細い手首を握る手に力を込めた。

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