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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第9章 花いかだ 其の弐

 ひそやかな衣ずれの音が薄い闇の底で妖しく響く。
 随明寺で互いの想いを確かめ合って一刻後、弥助とおれんは随明寺の門前道沿いにひっそりと建つ出合茶屋の一室にいた。この付近には似たような店―表は小料理屋風にしつらえ、実は男女が臥床を共にするための出合茶屋が数軒、並んでいる。
 昼間とてなお人気のない小道には、こういった場所特有の淫猥な雰囲気が漂っていた。

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