テキストサイズ

花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第9章 花いかだ 其の弐

「俺も一つ訊いて良いか?」
「何―?」
 無邪気に問うおれんの髪を、弥助はまた、撫でた。この女は時々、こんなあどけない少女のような表情をする。宵闇に浮かび上がる夜桜のような凄絶なまでの美貌、はたまた童女のごとく無垢な表情、様々な顔を見せるこの女は、弥助の心を捉えて離さない。
「今日、絵馬堂の方から歩いてきたじゃないか。あの時、何を祈っていたんだ?」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ