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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第9章 花いかだ 其の弐

「あの人でしょ。ほら、金平を作ってくれた女の人」
 その瞬間、弥助は〝う〟とも〝え〟ともつかぬ呻き声を洩らした。
「―え、よく判ったな」
 辛うじて漸くそのひと言を口にすれば、まだ子どもだと思い込んでいた十二歳の娘は、余裕の笑みで応える。これでは、どちらが親でどちらが子どもか判ったものではない。
「判るわよ、私だって女だもの。勘で判るわ」
「―女の勘って奴か?」

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