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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第10章 花いかだ 其の参

 ふてくされる藤次郎に、弥助は落ち着いた口調で言う。
「ホウ、泣く子も黙る大店のお坊っちゃんは、何でも自分がいちばん、欲しいものは望めばすぐにおとっつぁんが買い与えてくれるってか? 良いか、よおく聞け。若旦那、人間の価値なんてものは、たとえ三笠屋の跡取りであろうが、しがねえ職人であろうが、そんなもので決まりゃアしねえんだ。あんたみてえに、心の狭い、薄っ平な中身のねえ野郎を世間では何と呼ぶか知ってるかい、〝人間の屑〟っていうんだよ」

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