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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第10章 花いかだ 其の参

 一方、おれんを見送ってもまだ、弥助は和泉橋のたもとに佇んでいた。熱くなった頬に川を渡る風がひんやりと冷たく心地良い。
 今夜は色々と面倒な事が起きたけれど、これであのしつこい若旦那もしばらくは〝花のれん〟に顔を出すことはあるまい。それを思えば、あのいけ好かない若旦那をこんてぱんにのしてやれたのは、存外に効果的―いささか荒療治ではあるが―だったのかもしれない。

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