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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第11章 四つめの恋花 山茶花~さざんか~ 其の壱 

 夕刻から降り始めた雪は止む気配もなく、ただしんしんと沈黙を孕んですべてのものに降り積もってゆく。小さな川に掛かる橋の上にも、欄干にも雪はうっすらと降り積もっている。
 橋のたもとにぽつねんと立つ桜の樹は今、すべての葉を落とし、天に向かって細い枝先を突き立てるように伸びしている。その裸木となった桜の枝にも雪は降り積もり、純白の花を咲かせていた。

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